Letter From 

   LosAngeles

自己嫌悪


いやね、前にも書いたけどさ、留学生って言ったっていろんな奴がいるのよ。
真面目な人もいればバカもいるわな。

で、一番しょうもないタイプの留学が専門学校の短期留学。
2ヶ月くらいただボ〜ッと遊んで終わり。
それで英語も喋んないで留学ってんだから大したモンだ。
親もさぞかし大喜びだろうね「うちの子はロスに留学しまして・・・オホホホ」

まぁそんなことどうでもいいや。
たまには俺も日本食が恋しくなって日系スーパーに買い物に行ったり、日本の格闘技のビデオなんか借りに行ったりするんだな。

で、夜中の12時くらいかな?ビデオを返しに日系レンタルビデオ屋に行ったのよ。
そこで格闘技マニアのやつとバッタリあって、2〜30分くらい話してたのね。
そしたら突然車の防犯アラームがビービー鳴りだしたんだ。
地下駐車場には確か俺の車しか停まってないはず!こりゃ俺だな・・・とアラームを止めに行ったのよ。

車の防犯アラームは些細なことですぐ鳴りだすから始末が悪い。
道でバイクが回転数を上げると駐車している車が一斉に騒ぎだすくらい敏感にできている。
いいのか悪いのかロスの駐車場ではいつもどこかでアラームが鳴ってる。うるさいったらありゃしない。

で、俺もいつものことだと思いながらヘラヘラと車の所に行ったらこれがビックリ!
2人組が俺の車のカギ穴になにか突っ込んでるじゃねぇか!
一発で車泥棒だと分かった。
こういう時に泥棒って銃持ってたりするから、遠くの方から警告するのが1番だ。

「GET THE FUCK OUT MOTHER FUCKER ! 」(訳:出てけ!すっとこどっこい)
俺は大声でそいつらに叫んだ。すると
「やべぇ!」と日本語が聞こえた。
「あれ?日本人か?ほな簡単だ!」

日本人が銃なんか持ってるはずはないし、たとえ武器を携帯していてもナイフくらいなもんだ。
素人のナイフなら120%避けきれる。そう判断した俺は一目散にそいつらめがけて走り込んだ。
気分はもう刑事映画の主人公!けっこうノリノリだった。

さて、ここでアメリカ豆知識。
いかなる場合でも先に殴り掛かってはいけないよ。
必ず相手に先に手を出させること。そうすれば正当防衛が成り立つのよ。どんな場合でもね。
なぜって、裁判に持ってった時に過剰防衛だろうが何だろうがそうすりゃ無実になる。
だから映画なんか観ていても「かかってこいや!」とわざと挑発するんだよね。
日本だと過剰防衛のほうが罰せられたりするけど、そんなことは殺さない限りあり得ない
ましてや殺してもなんとかなるらしい。

案の定先に殴り掛かって来た。明らかに留学してきて間もない奴だ。
留学が長いやつはそんな愚かなマネはしない。したらよほどの世間知らずかアホだ。

で、たこ殴り♪

誰かが警察を呼んでくれたらしく、けっこう早くやって来た。
はい問題、一番最初にお縄をちょうだいしたのは誰でしょう?

いいかげんにせんかい!何で俺やねん!

まぁ、今考えてみると俺が警察だったらまず最初に俺を捕まえるけどね。
で、犯人2人は救急車で運ばれてった。たかが手の指折られたくらいでがたがた騒ぐんじゃねぇっての。
俺自身はすぐに釈放されて一段落。いい運動になった。帰って寝よ・・・

さて、普通ならネタにするようなハナシじゃないが、翌日大変なことになった。

犯人が死んでしまった・・・

と言うのは嘘。いくら俺でもそこまではやらねぇよ。

FBI から電話が掛かってきた!いやこれマジ。
一瞬「Xーファイル!」と思った俺のボキャブラリーの無さをお許し下さい。

あちゃー!過剰防衛はイエローカードで3回もらうとレッドカードか?ついに裁判所へ出頭か?
FBIと言う響きは実際に自分に向けられるとホント恐いね。とてつもない重圧を感じてしまったよ。
だいたいイメージが悪いもの!映画とかテレビで観るFBIって必ず悪いことしてるじゃない。
内心ちょっとアドベンチャーの予感がしていたんだけどね。

まぁ俺の期待に反してなんてことない。詳しい事情説明と2、3の質問だった。
この2人組は専門学校の短期留学生。2週間前にロスに来て、その日は飲みに行ったのだが、帰りの足がなく、タクシーを呼ぶ程英語が堪能じゃないので車を盗もうとしたらしい。
う〜ん・・あさはか・・・

で、いつものように警察が血液検査をしたところ(こっちじゃ血液検査はあたりまえ)、そいつらはアルコールだけでなく覚醒剤の反応も出たため事態は急変したってわけ。
家宅捜査で寮をしらべたら、部屋に覚醒剤が隠してあり、さらに調べるとそれを学校の生徒に売っていたらしい。

ちょっとしたことにしか思ってなかったんだろうね。
やっぱアメリカと言えばドラッグの本場。そりゃ好奇心で手も出したくなるよ。
でもね、日本だとそんなに大した罪にはならないけど、麻薬売買はカリフォルニアでは重罪なんだよね。
しかも留学生となるとハナシは別。外務省を巻き込んだ国際問題になるんだなこれが。
あんなものさえやってなきゃ強制送還くらいで済んだのに。

これはUCLAで法学を専攻している友達から聞いたんだけど、このようなケースの場合

・今後アメリカへの入国は禁止。(ECへの入国も不可)
・パスポートの15年間使用停止。
・運転免許証の取り消し。(再発行には審査が必要)
・国際軽犯罪者リストに名前が記載。
・国際法違反で罰金100万円以上500万円以下。
・覚醒剤取り締まり法違反でこれも裁判。

などなど。これが正確かどうかは別としてこのくらいは覚悟したほうがいいらしい。
ささいな事件が大変な事になってしまった。

あの2人は未来を棒に振ってしまったのかな?あの時あそこまで殴らなければ逃げられたのかな?
でも相手が殴り掛かってきたのは事実だし。
そう考えると自己嫌悪になってしまう。謝る気は毛頭ないが実に申し訳ない気持ちで一杯だよ。
俺の車さえ盗もうとしなければ・・・と考えるのは間違いかな?

物事と土地には必ずルールがある。自分の育ってきたルールは通用しないんだと痛感した。
自分は何様で何処から来て何処へ行くのか、そして自分の立っている場所は何処なのか・・・

それを把握していないと大変なことになるらしい。
けっして俺はやり過ぎたわけじゃない。でもそれはアメリカのルールでのハナシ。
俺自身が育った環境のルールではやり過ぎだったと思うが覚醒剤までは俺の知る範囲じゃない。
そんな奴は気にもしないしどうなろうが知ったことじゃない。
ただ問題はあいつらがそのルールを知らなかったことだ。フェアじゃなかったかもしれない。

う〜ん・・・でもなぁ・・・あと味わるぅ〜・・・